「今日は美菜の好きなステーキハンバーグ弁当買ってきてやったぞ」

「先輩、嫌がらせですか。ダイエット中だって言ったじゃないですか」

「そんなん知らん。もっと太れ」

「豚になったら、責任取ってもらいますからね」

「誰も貰い手がいなくなったら、考えてやる」


先輩は時々、ドキッとするようなことを口にすることがある。

そんな一言でわたしの心が一喜一憂していることなんて、先輩は知らないだろうな。


「美菜」


もう何度もこの家に足を踏み入れたかわからない。

琉生先輩はまるで自分の家であるかのように、リビングでくつろぎながらわたしの名を呼んだ。


「美菜、また母親か?」

「え?」

「泣いたろ?」


わたしの目をじっと見つめる先輩は、いつになく真剣な表情をしていた。

どうして先輩はいつもわたしの変化に気づいてしまうんだろう。


さっきだって涙を流したわけじゃない。

目に涙が少したまっただけなのに。

たったそれだけだったのに、もうバレてしまうなんて。