おばあちゃんが時々くれた少ないお小遣いをためて、お琴の爪や楽譜を買うので精いっぱいだった。

お金が足りないときは、先輩がこっそり楽譜をコピーして、手作りの楽譜をわたし専用に作ってくれたこともある。

意外と優しいところがあるんだ、先輩は。


「お金のかかる趣味ばっかりやりたがって。あんただって少しは協力しなさいよ。いい?今週中に5万振り込んでおいて」

「お母さん、わたし、5万なんて払えない……」

「じゃあ、2,3万でもいいから払ってちょうだい」

「わかった、何とかする」

「はいはい、よろしく」


1ヶ月のお母さんとの会話が終了した。

これが親子の会話かと思うと、悲しくて泣きたくなる。


“お金のかかる趣味ばっかり”

わたしがいつそんな趣味ばかりやりたがった?


わたしはお琴をやりたいと、あの時の一度しかわがままを言ったことなんてなかったのに。