家に帰ると、母親から連絡が入っていることに気が付いた。


“今月の振り込みまだ?”


離れて暮らす娘に対して、月に一度送ってくるラインは毎回このようなものだった。

しかも着信まで入っていて、切羽詰まった様子なのだろうということは想像がつく。


「もしもし。お母さん、前に言ったけど、今月からは払うの厳しいの。しばらくはお父さんの給料で何とかやってほしい」

「またさやかが入院して、入院費が払えなくて厳しいのよ。あんた、何とかっていう資格とったんでしょ。そんなのにお金使わずにこっちに回しなさいよね。全く気の利かない子なんだから」


お母さんはわたしがお琴をやることにずっと反対だった。

理由はお金がかかるから。


5歳下の妹のさやかは生まれつき心臓が悪く、大人になってからも入退院を繰り返している。

昔からさやかの手術代や入院費などにお金がかかって、わたしは自由に何もさせてくれなかった。


高校生の頃にお琴を習わせてほしいと頼んだこともあった。

でも、「そんなお金どこにあるの」と一喝され、高校生まではわたしに自由なんてなかった。