「もうすぐお免状式もあるし、次の演奏会では名取のお披露目曲もあるし。大忙しだな」

「でも、わたしが名取(なとり)の資格を頂けるなんて思っていませんでした」

「20代でなかなかとる人もいないから、なかなか頑張ったんじゃないか」


実は半年前に、琉生先輩から名取の資格を頂ける話があった。

名取とはお琴の師範の資格のようなもので、わたしもついに琉生先輩のように教室を開けるようになったのだ。


お琴を習ったり資格を取るにはお金がかかる。

社会人になってコツコツお金をためながら、ようやくここまでやってこれた。


「先輩はもっと早くとったじゃないですか」

「俺は5歳からやってるから。美菜は高校生からだし。それに大学生の頃はやってないからブランクあったわけで」


先輩は初めて会ったときから、もうお琴の腕はプロ並みだった。

その演奏で誰もを圧倒するくらいの、技術や表現力を持っていたのだ。

わたしも演奏に感動させられた大勢の一人。


先輩は天才だと誰もが口にする。

でも、わたしからすると先輩は「お琴バカ」という言葉が一番合っている気がする。