「それよりさ、明日弘毅のクラスも数IIのテストあるよね?こっちもだから教えてほしいんだけど」

「文系クラスとじゃ範囲違うんじゃないのか?」

「あー!そうかぁ。なんで弘毅そんな頭良くなってんのよ」

優絵は絶望感を隠すことなく頭を抱える。

「文系理系に頭の良さは関係ねぇだろ」

「あるの!理系は頭良いクラス!」

どうでもいいような他愛ない会話をしながら、駅への道を並んで歩く。
こういう緊張も遠慮もいらない関係に優越感を抱いた時もあったが、今となっては少しくらい緊張感が欲しいと贅沢に悩む。
でも、手に入れたいと渇望する強さと同じくらい、この「今」を壊したくないと怯えてみたり。

(女々しくて嫌んなるな)

俺は小さくため息をついて、前を向いた。