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マンションの非常階段に差し込む朝日は少し暖かくなってきた。
とは言え、まだ冷たい朝の風が吹き抜けていく。俺は階段の途中に座りながらポケットに手を突っ込んだ。
今日はマフラーくらいはしてきたらよかったか、と首をすくめる。
同じマンションに住む幼馴染の優絵と待ち合わせて学校に行くようになったのは、高校に入ってからだ。
中学まではからかわれるのが嫌で、お互い別々だった。
しかし同じ高校に進学し、同じ電車で通うんだからと優絵が提案して、一緒に通学するようになって2年経つ。
ここで彼女が降りてくるのを待つ時間すら、悪くないと思える。
いつも目を閉じて上階から響いてくる軽やかな足音を聞く。
タンッと数段飛ばして、近くに優絵の気配を感じる。

「おはよ。弘毅」

少し弾んだ声を聞いて、俺は振り返る。