「お取り寄せまでしたホワイトデーの限定品でしょ?渡せてないなら貰ってあげようか?」
数日前に届いた俺宛の荷物は、運悪く妹が受け取ってしまった。有名菓子店のものだったのでバレているらしい。よく見てやがる。

「渡したよ。うっせーな」

「なあんだ」

弘美はガッカリした声をあげる。女子人気の高いらしい店だったので、半分くらいは本気で食べたかったのだろう。

「『テスト勉強中って甘いものあると助かるー!』ってよ」

俺は冷めかけたコーヒーを啜りながら、昨日の優絵の様子を伝える。

「ゆえちゃあああん!!女子力つけてよぉぉぉ!」

器用に皿をよけて、弘美はテーブルに突っ伏した。
優絵は陸上部一筋で、ちょっとさばけた性格をしている。そのせいか、普通の女子なら気付きそうなことにも気付かないのは標準仕様だ。俺としては伝わらないことは織り込み済みで渡している。

「優絵がバレンタインにチョコくれるだけでも十分進化だろ。」