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「で?なんて言われたの?」

自販機の横に置かれたベンチに優絵を座らせ、落ち着かせる。
俺はそのすぐそばに横向きに腰を下ろした。
背もたれに腕を置いて、空いている手で優絵の手の甲を撫でた。距離が近いのか、優絵の顔の赤みは消えないままだ。
俺の言葉にぽかんとする優絵の鼻をつまんで、「お前が自分で正解に辿り着けるとは思えないんだけど」と言う。
その言葉に抗議しようと開きかけた口は、途中で拗ねたように突き出される。

「昨日、弘毅にもらったマカロンをね、おやつに持ってきたの」

その光景を想像して吹き出しそうになる。どうにか口を拳で押さえて笑いをこらえる。

「で?」

「弘毅にもらったって言ったら、友達に『ホワイトデーのお返しって意味あるんだよ』って言われて。」

「うん」