テストが終わってあとは帰るだけの時間のせいか、自販機コーナーには誰もいない。
とにかく飲み物でも飲みながら落ち着こう、と自販機に向かう。

「何飲む?」

「ねえ、弘毅」

不意に呼ばれて振り返ると、顔を真っ赤にして俺との間にある数メートルの距離を詰められた。
袖をつかまれ、逃げられないようにか、さらににじり寄ってくる。
背中に、自販機が当たった。

「ホワイトデー、マカロンくれるって意味、分かってる?」

4年間気づかなかったお前がそれを言うのか、と苦笑する。
しかし頬を赤く染めて上目遣いは色々やばい。俺は、なんとか理性を保つ。

「わかってるつーか、そのために優絵に渡してんだし」