翌日、登校してきた校門の前で、舞香は待っていた。

顔を見るなり俺の腕に絡みつく。

「おはよう。私に会えなくて寂しかった?」

「舞香を返せ」

「どうして? 私は私なのに?」

「舞香はハクのことが好きだったんだぞ」

「今でも好きだってよ」

 その腕を振り払う。

「お前がその気なら、俺は許さない」

「ここであったことを話せ」

「お前の探しているものはなかった」

 舞香の顔が歪む。

そうさせているのは、ハクだ。

そうだ。

ハクの探しているのは、宝玉なんだ。

あの白銀の龍じゃない。

「お前の探しているのは、誰の宝玉だ」

「……。やはり、ここで会ったのだな」

 しまった! 

「会ってない」

「何を話した」

 舞香の手が、俺の胸ぐらを締め上げる。

「なんと言っていた。お前に、何を伝えた」

「ハク……、こんな目立つところで、いいのか?」

 今は朝の校門前。

登校してくる生徒たちの、注目の的だ。

話しをするにも無理がある。

だけどそんな人間の都合は、ハクには通じない。

「全てを話せ!」

「舞香ちゃ〜ん!」

 彼女の腕を押さえたのは、山本だった。

「こんなところで痴話喧嘩は、さすがにダメだよぉ〜」

「放せ!」

 いくら舞香がハクでも、男2人に女の子1人の力じゃ敵わない。

もしくは、ハクに宝玉がないから?

「圭吾もこんなところで怒らせないの! さぁ、一旦落ち着こう」

 騒ぎに気付いたみゆきも、やってきた。

「ま~いか! 愚痴なら聞いてあげっから。教室行こ」

 みゆきは舞香の肩を抱き寄せた。

そのまま靴箱へと向かってゆく。

ハクは大人しくなったようだが、舞香に戻ったかどうかは分からない。

山本は盛大なため息をつく。

「で、ケンカの原因はなに?」

「荒木さん」

「……。圭吾、あきらめろ」

 やかましいわ。

そうは思っても、だけどそれ以上は、なにも言えない。

「ま、本当のことを言いたくないなら、それでもいいけど、困った時は相談くらいしろよ。友達だろ?」

 山本を見た。

ニッと愛想よく笑ってくれても、こんなこと、誰にも相談出来ない。

教室へ向かう階段を上る。

あれ? 

そう言えばコイツって、ハクが見えてるんだっけ? 

山本の制服の白いシャツは、俺のすぐ目の前を上ってゆく。