写真コンクールの校内選抜まで、一週間を切っている。
使えそうな写真なんて、まだ一枚もない。
フォルダーに保存されている使い物にならない無駄な画像を、次々と飛ばし見ている。
俺はこれまでの数日間、一体何をしていたのだろう。
いくら演劇部の手伝いをしていたとはいえ、他のことをする時間もあったはずだ。
「よ。舞香ちゃんと付き合いだしたって?」
「誰だよ、そんなデマ流してんの」
「希先輩から聞いたぞ」
狭い部室に一台しかないパソコンの前で、山本は俺の隣に座る。
「校内選抜に出す写真、選んでんの?」
「お前は?」
「いちおう決めた」
山本はマウスを動かす。
カチカチとフォルダーを開くと、そこには舞台衣装を着て野外練習をしている演劇部員たちの、裏方スタッフを含めた練習風景が写されていた。
ふりそそぐやわらかな午後の日差しに、派手な衣装と制服のコントラスト。
緑の森を背景に、コミカルでユーモラスな雰囲気が映し出されている。
「……。なんか、有名な洋画の巨匠作品、元ネタ実写版って感じだな」
「マジ? ちょっとうれしい」
山本は喜んでいる。
ちゃんと伝わってるじゃないか。
俺だって褒めたし、褒めたつもりだ。
「お前のは?」
彼の動かすマウスが、俺の空っぽになったフォルダーをクリックする前に、それを取り上げた。
「結局、演劇部の動画編集に付き合ってたから、撮れてないんだよ」
「あぁ、舞香ちゃんのモデル撮影もまだだしな」
「うん」
山本にそんなことを言われ、渋々三脚を担ぐ。
俺にはなぜか、顔を上げることは出来なかった。
「あ、今から撮影?」
「待たせてるから」
「頑張れよ」
部室を飛び出す。
賑やかな放課後を、急ぎ足で通り過ぎる。
後ろめたさが俺の足を動かしている。
待ち合わせ場所の中庭に、もうすでに彼女は来ていた。
「早いね」
「ね、どこで撮る? 教室?」
振り返ったその表情で、一枚。
「そんな突然始まるもんなんだ」
呆れたような表情とその仕草に、また一枚。
「階段上って、教室に移動して」
その指示に、彼女は動き出す。
一段一段と上ってゆく足元を、後ろ姿でまた一枚。
使えそうな写真なんて、まだ一枚もない。
フォルダーに保存されている使い物にならない無駄な画像を、次々と飛ばし見ている。
俺はこれまでの数日間、一体何をしていたのだろう。
いくら演劇部の手伝いをしていたとはいえ、他のことをする時間もあったはずだ。
「よ。舞香ちゃんと付き合いだしたって?」
「誰だよ、そんなデマ流してんの」
「希先輩から聞いたぞ」
狭い部室に一台しかないパソコンの前で、山本は俺の隣に座る。
「校内選抜に出す写真、選んでんの?」
「お前は?」
「いちおう決めた」
山本はマウスを動かす。
カチカチとフォルダーを開くと、そこには舞台衣装を着て野外練習をしている演劇部員たちの、裏方スタッフを含めた練習風景が写されていた。
ふりそそぐやわらかな午後の日差しに、派手な衣装と制服のコントラスト。
緑の森を背景に、コミカルでユーモラスな雰囲気が映し出されている。
「……。なんか、有名な洋画の巨匠作品、元ネタ実写版って感じだな」
「マジ? ちょっとうれしい」
山本は喜んでいる。
ちゃんと伝わってるじゃないか。
俺だって褒めたし、褒めたつもりだ。
「お前のは?」
彼の動かすマウスが、俺の空っぽになったフォルダーをクリックする前に、それを取り上げた。
「結局、演劇部の動画編集に付き合ってたから、撮れてないんだよ」
「あぁ、舞香ちゃんのモデル撮影もまだだしな」
「うん」
山本にそんなことを言われ、渋々三脚を担ぐ。
俺にはなぜか、顔を上げることは出来なかった。
「あ、今から撮影?」
「待たせてるから」
「頑張れよ」
部室を飛び出す。
賑やかな放課後を、急ぎ足で通り過ぎる。
後ろめたさが俺の足を動かしている。
待ち合わせ場所の中庭に、もうすでに彼女は来ていた。
「早いね」
「ね、どこで撮る? 教室?」
振り返ったその表情で、一枚。
「そんな突然始まるもんなんだ」
呆れたような表情とその仕草に、また一枚。
「階段上って、教室に移動して」
その指示に、彼女は動き出す。
一段一段と上ってゆく足元を、後ろ姿でまた一枚。