翌日の写真部部室には、舞香が来ていた。

撮影した本番の編集作業のためだ。

「ゴメンね。これが終わったら、ちゃんとモデルするから」

 正面で2台、舞台下からの撮影2台、計4台のカメラからの編集だ。

文字入れ等の必要がないとはいえ、台本と見比べながらの早送り鑑賞が続く。

 進んでは戻り、戻ってはまた進める。

台本で確認しながら、役者の見せ所では舞台下からの映像を使い、適宜全景と組み合わせながら編集していく。

彼女の作業を横目に見ながら、自分の現実もこうやって編集出来ればいいのにと、そんなことを思った。

「この場面、どっち使ったらいいと思う?」

「う~ん……。やっぱ左カメラかな」

「だよね。ありがと」

「俺も人生編集したいな」

 そう言うと、彼女は笑った。

「撮影より編集の方が大変だよ」

「そっか。じゃあ素直に撮られるだけにしとくか」

「うん。そっちだけの方が絶対楽しいし、楽だと思う」

 編集作業は進んでいく。

時々部室に誰かが入ってきては、また出て行った。

俺と彼女しかいない狭く薄暗い部室で、カチカチと動かすマウスの音が響く。

校庭から聞こえる声は、別世界からの音声のようで、パソコン画面の中で何度も何度も同じシーンの繰り返される、この変わらない芝居の方が俺たちには現実だった。

下校時間が近づく。

今日の作業はここまでだ。

「今日はハクは?」

「いつも一緒にいるわけじゃないの。自由気ままにあちこち行ってる。自分でもちゃんと探してるよ。ハクは」

 片付けをして、部室を出た。

山頂の学校からは、夕暮れの街が一望出来る。

通い飽きた坂道を並んで歩いた。

今日はいつもと同じように、彼女との距離は遠い。

「……。宝玉探し、手伝わなくていいんだ」

「だって、今は忙しいんだもん」

 だけど、それだとハクは困っているだろうなって、そんな言葉を飲み込む。

俺だって手伝っているわけじゃないし、手伝いたいとも思っていない。