「確か写真部さん、学校SNSに動画あげてますよね。テロップとかの文字入れとかもしてるし。入学式の様子とかも。写真撮ったのをつなぎ合わせて、動画なんかも編集して学校ホームページとかにあげてましたよね。それやったの、圭吾なんじゃないの? 前に自慢げに話してたの聞いてたんだけど……」

 うう。何やってんだ俺。

そんな過去の行動がいまになって仇になるだなんて、そんなこと考えたことある? 

俺は横を向いたままパソコンを触っているフリを続ける。

ガタリと椅子が動いた。

「だけどほら、お願いされたって写真部のパソコンはもう保存データが一杯でさ、演劇部の長い動画編集は作業が重くなるから……」

マウスを動かし、時間稼ぎのためだけに、封印されていたフォルダーを開いた。

『星空』とフォルダーだ。

一枚しか保存されていないその中には、いま目の前にいる舞香が、あの時の瞬間のまま保存されていた。

「これって盗撮……?」

「はい?」

 突然、頭上から声が聞こえた。

驚いて顔を上げる。

すぐ後ろにイケメン部長が立っていた。

画面には、まっすぐにこっちを見ている舞香の画像が映し出されている。

慌てて画面を手で覆う。

「違います! だってほら、こっち向いてるでしょう?」

 とは言ったものの、すぐそこにいる本人に確認されればお終いだ。

画像ファイルを閉じなければ。

マウスを動かそうとした俺の手に、イケメン部長の手が重なった。

彼は俺の耳元でそっとささやく。

「舞香のこと好きなの?」

「だから違うって……」

「大丈夫。協力するよ。もう誰にも、盗撮だなんて言わせない」

「ちがっ!」

「ほら、やっぱり動画編集ソフトが入ってる」

 重ねられた荒木さんの手が動く。

操作されたマウスは、さっきまで俺の見ていた動画編集ソフトを、何の躊躇も忖度もためらいもなく表示する。

「ね、圭吾クンは動画編集作業できるの?」

「出来ますよ部長! 圭吾、そういうの得意だって自分で言ってました!」

「わー。それは実に頼もしいね」

 完全に棒読みじゃねぇか!