「お前も頼めばよかっただろ」

「やだよ」

「なんで」

 みゆきはフンと鼻をならした。

「撮れた画像のモデルがいいって言われるの、なんかムカつくから。やっぱ腕をみてもらいたいじゃない? そりゃいいモデル使う方がいいっていうのは、間違いないんだけどさ」

 みゆきはふてくされたような顔で言った。

「それに、希先輩も頼まないっていうから……」

「そうなの?」

 意外だな。

あの人は誰よりもそれを望んでいただろうに……。

「遠くからならいいんだけど、恥ずかしいんだって。つーか、去年希先輩がモデル頼んだ時も断ったって話しだから、本当は目立つのあんまり好きじゃないのかもね」

 そう言ったみゆきを見上げる。

「あぁ、なるほど」

 そういう解釈の仕方もあるのか。

「ちょっと意外だよね。『俺は誰のものにもならない』ってタイプなのに」

「なんだそれ」

 そんな雰囲気あるか?

「きっと圭吾には分からんよ」

「あっそ」

 そんな情報を仕入れたところで、どうしようもない。

遠くから見ているだけの俺には、それ以上近づけないことを知っている。

「ま、私の場合はそれだけじゃないけど……」

「撮影に行ってくる」

 ホワイトボードの行き先を「校内」に動かす。

賑やかになってきた部室を抜けだした。

人物の方が人気高いって、そんなのは知ってる。

だけど撮りたくないものは撮りたくないのだから、仕方がない。

 放課後の校庭というのは、特別な時間だと思う。

日中の学校がタテマエだとしたら、こっちはホンネみたいだ。

部活棟付近に設置された原生林脇のベンチに、舞香とハクが座っている。

ここからはあの池も近い。

俺が近寄ると、ハクはとぐろを巻いたまま片目を開けた。

今日は体が透けていない。