透けるような彼女の頬が、わずかに赤らんだような気がした。
「なに?」
「……。荒木さんのこと、好きなの?」
「どうして?」
ひさしぶりに間近に並んだ顔が、ちょっぴり傾く。
「圭吾は……、希先輩?」
「希先輩は、荒木さんが好きだから」
「なんか、あっさり認めるんだね」
「だって、舞香に隠してても、しょうがないもん。見てたら分かるでしょ」
「圭吾は、希先輩のどこがよかったの?」
「じゃあ逆に聞くけど、荒木さんのどこがいいの」
「あはは。やめてよ、そんなこと」
彼女の後でスカートがはねる。
その背中は一段一段と階段を下りてゆく。
「ね。二人で撮影しながら、なに話してたの」
「別に。何も話してないよ」
「何もないことはないでしょ」
「たとえば?」
「たとえばって……。『こっち向いてー』とか」
「そんなこと、言わないし」
もしそうやって彼女に呼びかけたら、あの教室でどんなふうに振り返ったんだろう。
そんなことを考えていたら、ふいに彼女は振り返った。
「ね、私が写真撮ってあげようか」
「は? なんで?」
「いいじゃない。ちょっとやってみたい。ほら、こっち向いてー」
指で作る四角いフレームに、彼女の楽しそうな笑みが囲まれる。
「いや、そんなんじゃ撮れないでしょ」
「あ、じゃあ本気でスマホで撮る?」
いつだって、そのためのカメラは用意してあるのに……。
俺はずっしりと重たい、首にかかるカメラを持ち上げた。
彼女に向かって、レンズを掲げる。
シャッターを切った。
「ちょ、やだ! ちゃんと撮る時は言ってよ」
「だから、そんなこと言わないって言ったし」
「もう! いいよーだ。私も撮るからね」
スマホを構えたその姿に、もう一度シャッターを切る。
「ほら、こっち向いて!」
「向いてるし」
「だから、。私のはもういいよぉ」
踊り場で振り返る。
ちょっと怒ったような上目遣いが、画像に納まる。
「……。これ、荒木さんに送ろうかな」
「やめて」
「冗談だって」
はは。『はは』だって、どうした俺。
彼女の手が俺の腕に触れる。
カメラの表示画面を向けると、そこに頭を寄せてきた。
彼女の前髪が、鼻先をくすぐる。
「撮られてみた感想は?」
「感想って、別に……」
「よくない?」
「別にそうでもなくない?」
そうでもなくは、なくなくない。
「なんかちょっと恥ずかしい」
「俺は悪くないと思うけどね」
展示会の候補作品として、校内選抜にかけてもいいくらいだ。
そう思っているのに、彼女は本当に呆れたような顔で見上げてくる。
胸が痛む。
どうせならもっと、違う反応を見せて欲しい。
「なに?」
「……。荒木さんのこと、好きなの?」
「どうして?」
ひさしぶりに間近に並んだ顔が、ちょっぴり傾く。
「圭吾は……、希先輩?」
「希先輩は、荒木さんが好きだから」
「なんか、あっさり認めるんだね」
「だって、舞香に隠してても、しょうがないもん。見てたら分かるでしょ」
「圭吾は、希先輩のどこがよかったの?」
「じゃあ逆に聞くけど、荒木さんのどこがいいの」
「あはは。やめてよ、そんなこと」
彼女の後でスカートがはねる。
その背中は一段一段と階段を下りてゆく。
「ね。二人で撮影しながら、なに話してたの」
「別に。何も話してないよ」
「何もないことはないでしょ」
「たとえば?」
「たとえばって……。『こっち向いてー』とか」
「そんなこと、言わないし」
もしそうやって彼女に呼びかけたら、あの教室でどんなふうに振り返ったんだろう。
そんなことを考えていたら、ふいに彼女は振り返った。
「ね、私が写真撮ってあげようか」
「は? なんで?」
「いいじゃない。ちょっとやってみたい。ほら、こっち向いてー」
指で作る四角いフレームに、彼女の楽しそうな笑みが囲まれる。
「いや、そんなんじゃ撮れないでしょ」
「あ、じゃあ本気でスマホで撮る?」
いつだって、そのためのカメラは用意してあるのに……。
俺はずっしりと重たい、首にかかるカメラを持ち上げた。
彼女に向かって、レンズを掲げる。
シャッターを切った。
「ちょ、やだ! ちゃんと撮る時は言ってよ」
「だから、そんなこと言わないって言ったし」
「もう! いいよーだ。私も撮るからね」
スマホを構えたその姿に、もう一度シャッターを切る。
「ほら、こっち向いて!」
「向いてるし」
「だから、。私のはもういいよぉ」
踊り場で振り返る。
ちょっと怒ったような上目遣いが、画像に納まる。
「……。これ、荒木さんに送ろうかな」
「やめて」
「冗談だって」
はは。『はは』だって、どうした俺。
彼女の手が俺の腕に触れる。
カメラの表示画面を向けると、そこに頭を寄せてきた。
彼女の前髪が、鼻先をくすぐる。
「撮られてみた感想は?」
「感想って、別に……」
「よくない?」
「別にそうでもなくない?」
そうでもなくは、なくなくない。
「なんかちょっと恥ずかしい」
「俺は悪くないと思うけどね」
展示会の候補作品として、校内選抜にかけてもいいくらいだ。
そう思っているのに、彼女は本当に呆れたような顔で見上げてくる。
胸が痛む。
どうせならもっと、違う反応を見せて欲しい。