「うわっ!」

 振り返ったとたん、ぶつかったのは山本だった。

「なんだよお前、驚かすなって!」

「……。なぁ圭吾、お前さぁ……」

 顔色が悪い。

いつになくおどおどとして、明らかに言動がおかしい。

「どうした? 何かあったのか?」

 おかしな様子の山本に、こっちまで不安になる。

「和物の龍って言ったら……分かる?」

「和物の龍? あぁ……。分かるよ」

「本当か?」

 山本の顔に血の色が戻った。

がっくりと全身の力が抜ける。

コイツも何かを見たのか。

「あれってさぁ……」

「うん」

「……。あれって……。よ、よく、神社とか日本画に出てくるやつだよな」

「そうだな」

「アニメとか」

「だね」

 山本と目が合う。

俺は目を合わせたまま、しっかりと力強くうなずいた。

彼はそれにようやく落ち着いたのか、乾燥しきった声で笑う。

「はは……。いや、何でもないんだ。ちょっとどうかなって思っただけで……」

「うん。分かるよ。なぁ、休憩しようか。ちょっと休もう。どっか涼しいとこ行こうぜ」

 肩に腕を回す。

少しホッとしたような顔をしたコイツに、なんだか俺の方が申し訳ない気持ちになる。

クソ。

なにが兄妹だ。

宝玉だ。

1000年の龍だ。

あいつら、ぜってぇ許さねぇからな。