「どうだろうね」
チビ龍は宙に浮いたまま、じっとこっちを見つめている。
聞きたいことは山ほどあるけど、何をどう聞いていいのかも分からない。
そもそも、そんな込み入ったことを、簡単に聞いてもいいことなんだろうか。
同じ傘の中にいるその距離がぐっと近づいて、俺は無意識に後ずさる。
「雨には濡れても平気なの?」
「特に問題はない」
「普段は何を食べてる?」
「『食事』というものは不要だ」
「家族とか兄弟は? 友達とかいないの?」
「……。人の子はやはり不思議だな」
半透明の実在するはずのない、空想の生き物だったそれは言った。
「聞きたいことがあるなら、ちゃんと聞け」
透明な体はさらに透け、チビは言いたいことだけ言い残し、やがて見えなくなってしまった。
もうどこにもチビ龍の気配を感じられない。
俺に用はなくなったいということか?
雨の降る音に混じって、運動部のシューズが床を擦る音が、ここまで聞こえてくる。
それが俺の耳に鳴り響いている。
自然と足はそちらに向かった。
開け放された扉から中をのぞき込むと、バスケ部と卓球部の向こうに、壇上を行き来する演劇部の姿が見えた。
「圭吾、来たのか」
頭上から声が聞こえた。
見上げると、二階席に山本がいる。
俺は入り口に戻って階段を昇ると、何となく山本の隣に腰を下ろした。
ステージに近い部分の二階席には、演劇部員たちがいて、なんだか色々やっている。
「でさ、舞香ちゃんとは結局、どうなったの?」
いつの間にか山本にまで心配されている。
「いや。元々何でもないから」
「もう写真部に、編集も習いに来ないの?」
「さぁ」
空席の並ぶその向こうに、スマホを抱えた舞香と希先輩がいた。
舞香から何かを話しかけ、希先輩がそれに応える。
彼女の小さなスマホ画面を、頭をくっつけ合うようにして眺めていた。
チビ龍は宙に浮いたまま、じっとこっちを見つめている。
聞きたいことは山ほどあるけど、何をどう聞いていいのかも分からない。
そもそも、そんな込み入ったことを、簡単に聞いてもいいことなんだろうか。
同じ傘の中にいるその距離がぐっと近づいて、俺は無意識に後ずさる。
「雨には濡れても平気なの?」
「特に問題はない」
「普段は何を食べてる?」
「『食事』というものは不要だ」
「家族とか兄弟は? 友達とかいないの?」
「……。人の子はやはり不思議だな」
半透明の実在するはずのない、空想の生き物だったそれは言った。
「聞きたいことがあるなら、ちゃんと聞け」
透明な体はさらに透け、チビは言いたいことだけ言い残し、やがて見えなくなってしまった。
もうどこにもチビ龍の気配を感じられない。
俺に用はなくなったいということか?
雨の降る音に混じって、運動部のシューズが床を擦る音が、ここまで聞こえてくる。
それが俺の耳に鳴り響いている。
自然と足はそちらに向かった。
開け放された扉から中をのぞき込むと、バスケ部と卓球部の向こうに、壇上を行き来する演劇部の姿が見えた。
「圭吾、来たのか」
頭上から声が聞こえた。
見上げると、二階席に山本がいる。
俺は入り口に戻って階段を昇ると、何となく山本の隣に腰を下ろした。
ステージに近い部分の二階席には、演劇部員たちがいて、なんだか色々やっている。
「でさ、舞香ちゃんとは結局、どうなったの?」
いつの間にか山本にまで心配されている。
「いや。元々何でもないから」
「もう写真部に、編集も習いに来ないの?」
「さぁ」
空席の並ぶその向こうに、スマホを抱えた舞香と希先輩がいた。
舞香から何かを話しかけ、希先輩がそれに応える。
彼女の小さなスマホ画面を、頭をくっつけ合うようにして眺めていた。