放課後の学校というのは、どこだって賑やかで開放感にあふれている。

ふと見れば、体育館の横で知らない間に、写真部と演劇部数人での撮影会が始まっていた。

 演劇部員一人一人を、写真部が順番に撮影している。

その隣ではふざけあう数人の演劇部員を、別の写真部員が撮影していた。

そりゃ自由に人物撮らせてもらえる約束なんだもん、写真部的にはうれしいよな。

 その騒ぎの中でも、ひときわ目立つ背の高い人物がいる。

荒木さんだ。

彼の放つ独特なオーラは、なぜか人目を引いた。

部長である彼は、賑やかな周囲に何か声をかけている。

遠くにいるから、こっちには気づいてないはずなのに、その中心にいる彼と、ガッツリ目があった。

仕方なくペコリと頭を下げると、彼はこちらに向かって手を振る。

さらに近づいても来るようだ。

なんで?

「舞香から何か聞いたか?」

「何をですか」

 上からの視線が見下ろしてくる。

俺は静かになったその人を見上げた。

「で、付き合いだしたの?」

「付き合ってません!」

「あはは、なんだよ。だったらこんなところにいないで、こっち来いよ」

 そんな爽やかな笑顔で煽られたって、そう簡単には引っかかりません。

「協力はしますよ。だけど、俺の撮影対象は、メインは人物じゃないんで」

 そう言えばこの人も、池の歴史に興味があるんだったっけ。

このヒトはどこまで、彼女と彼女の秘密を知っているのだろう。

「結局キミが舞香に編集を教えてくれてるんだって? 希から聞いたよ。最初は反対してたのに。ありがとう。助かるよ」

 信じられないくらい爽やかな表情で、彼は微笑む。

「これからもよろしくね」

 片手だけをあげて、フランクに挨拶するその仕草まで、実に優雅だ。

同じ人間とは思えない。

なんだか俺は恥ずかしくなって、うつむいてしまった。

あぁいう笑顔が出来たら、もっときっと誰からも優しくしてもらえるんだろうな……。

 遠くではしゃぐ人の群れが眩しくて、俺はそこへ向かってシャッターを切った。

楽しそうな写真は、遠くから撮すのが丁度いい。

そのまま演劇部と写真部のみんなが楽しそうに交わるのを眺めていたら、そのまま下校時間を迎えてしまった。

俺は一人部室棟へ引き上げる。

そういえば希先輩が、データの空き容量がどうのこうのって言ってたっけ。

 扉を開いたら、舞香が座っていた。

「あ、お帰りなさい」

 パソコンの前で、一人動画編集作業をしている。