このヒトの姿にそれを重ねてみても、もう終わったことと、興味をなくしてしまったのだろう。
再び記憶を封印し、また消し去ってしまったのか……。
希先輩は荒木さんに、あれこれと話しかけているけれども、全く相手にはされていなかった。
身振り手振りで一生懸命笑ったり怒ったり……。
ふと希先輩と目が合う。
「なによ」
「いえ、何でもないっす」
結局付き合い始めたのかな?
そうでもないのかな。
よく分からないけど、まぁいっか。
希先輩が楽しいのなら、それでいいや。
もう関係ないし。
俺は立ち上がった。
「じゃ、また」
「おう。舞香によろしく」
そう言った荒木さんを見下ろす。
隣の希先輩からの視線が痛い。
この人は本当にもうちょっと、自分自身のことをなんとか考えた方がいいと思う。
回りのことは十分見えているのに、自分のことだけは完全に見えていない。
体育館を離れ、校舎の陰を横切った。
いつだって人気のない静かなベンチに、肩までの髪を揺らして彼女は座っている。
放課後の時間をここで待ち合わせするのが、なんとなく習慣になっていた。
「お待たせ。早かったね」
「別に待ってないし」
舞香は紙パックのマンゴージュースを、ストローでズズッと吸い上げる。
「それで?」
「それでって?」
「宝玉もらって、別に気分が悪くなったとか、体調悪いってこともないんでしょう?」
「まぁね」
「胸に違和感もない」
「ない」
彼女はため息をついた。
「人に扱えるものじゃないって言ってたから、本当に人間には、どうしようもないのかもね」
そのことは分かった。
だけど、どうして荒木さんは、俺に預けようと思ったんだろう。
つーか、あのヒトは将来、どうやって回収するつもりなんだ? コレ……。
「持たされ損?」
「預かり損的な?」
「なんだそれ。レントゲンとかどうすんだ。CT撮るとか、飛行機の検査場とかさぁ」
自分の胸に手を当てる。
納得いかない。
だったらなんで、こんなことしたんだ。
そこをなで回している俺に、舞香はため息をついた。
「きっとそういうトコ」
「なにがだよ」
「何でもない!」
彼女はベンチに座ったまま、両腕を思いっきりう~んと伸ばした。
「きっとまた、会いたいってことだよ」
「え? 誰に?」
「で、いつ見に行くの?」
「なにを?」
彼女の視線が、じっと非難たっぷりにこっちを見てくる。
「えぇっと……」
うつむいたその視界の端に、山本とみゆきの姿が見えた。
並んで歩く二人の背が近づいたかと思うと、キュッと手をつなぐ。
再び記憶を封印し、また消し去ってしまったのか……。
希先輩は荒木さんに、あれこれと話しかけているけれども、全く相手にはされていなかった。
身振り手振りで一生懸命笑ったり怒ったり……。
ふと希先輩と目が合う。
「なによ」
「いえ、何でもないっす」
結局付き合い始めたのかな?
そうでもないのかな。
よく分からないけど、まぁいっか。
希先輩が楽しいのなら、それでいいや。
もう関係ないし。
俺は立ち上がった。
「じゃ、また」
「おう。舞香によろしく」
そう言った荒木さんを見下ろす。
隣の希先輩からの視線が痛い。
この人は本当にもうちょっと、自分自身のことをなんとか考えた方がいいと思う。
回りのことは十分見えているのに、自分のことだけは完全に見えていない。
体育館を離れ、校舎の陰を横切った。
いつだって人気のない静かなベンチに、肩までの髪を揺らして彼女は座っている。
放課後の時間をここで待ち合わせするのが、なんとなく習慣になっていた。
「お待たせ。早かったね」
「別に待ってないし」
舞香は紙パックのマンゴージュースを、ストローでズズッと吸い上げる。
「それで?」
「それでって?」
「宝玉もらって、別に気分が悪くなったとか、体調悪いってこともないんでしょう?」
「まぁね」
「胸に違和感もない」
「ない」
彼女はため息をついた。
「人に扱えるものじゃないって言ってたから、本当に人間には、どうしようもないのかもね」
そのことは分かった。
だけど、どうして荒木さんは、俺に預けようと思ったんだろう。
つーか、あのヒトは将来、どうやって回収するつもりなんだ? コレ……。
「持たされ損?」
「預かり損的な?」
「なんだそれ。レントゲンとかどうすんだ。CT撮るとか、飛行機の検査場とかさぁ」
自分の胸に手を当てる。
納得いかない。
だったらなんで、こんなことしたんだ。
そこをなで回している俺に、舞香はため息をついた。
「きっとそういうトコ」
「なにがだよ」
「何でもない!」
彼女はベンチに座ったまま、両腕を思いっきりう~んと伸ばした。
「きっとまた、会いたいってことだよ」
「え? 誰に?」
「で、いつ見に行くの?」
「なにを?」
彼女の視線が、じっと非難たっぷりにこっちを見てくる。
「えぇっと……」
うつむいたその視界の端に、山本とみゆきの姿が見えた。
並んで歩く二人の背が近づいたかと思うと、キュッと手をつなぐ。