「で……、どうすればいいんだ?」

 見つけたはいいが、その先のことなんて考えてなかった。

「ハ、ハク。ほら、お前のだろ? 取れよ」

 彼女は舞香にしがみついたまま、激しく首を横に振る。

「な、なんだよ。宝玉見つけたら帰るって……」

「……。嫌だ。私はずっと、舞香とここにいる」

「……。え? ここに来てそれなの?」

「ハクちゃん!」

 舞香はハクをぎゅっと抱きしめた。

ハクも彼女にしがみつく。

「舞香、舞香は私のことが嫌いか?」

「ううん。なんでそんなこと言うの? 嫌いなわけないじゃない」

「よかった。舞香には……。たくさん迷惑をかけた。意地の悪いこともしたし、正直……。私は、お前を利用するつもりだった」

 ハクは人形のように、変わらない表情で舞香を見上げる。

「人だなんてものは、天上人の形だけ真似た、まがい物だと思っていた。だけど私たちと、なにも変わらない。罪を背負い地に落ちた者たちの思いが、ここにはあふれている」

 ハクの肩までの髪が揺れた。

「ここは楽しいな。その短すぎる命を、必死で生きようとする姿を、あの方は私にもあの方にも、見せたかったのかもしれない……」

「ハク……」

 舞香の手が、ハクの流れてはこない涙を拭った。

その白く固い表情に、わずかな笑みが浮かぶ。

ハクは、キッと俺をにらみつけた。

「舞香はすぐに死んでしまう。この生は一瞬の出来事だ。だとしたら私は、せめてその間だけでも、舞香と一緒にいる」

 俺は荒木さんを見上げた。

なにも言わず動かないまま、じっと二人の様子を見ている。

「ハクちゃん。ありがとう」

 舞香はハクのかぶっている、濃紺の帽子を手に取った。

艶やかな髪を指先ですくい上げる。

「私もハクと離れたくない」

「舞香! ありがとう。私はお前の望み通り、共にあろう。一緒に海にも行きたい、また観覧車にも乗ろう。沢山の物をみて、共に笑い、泣き、いつもその胸に……」

 舞香はハクの額を、その指先でそっと触れた。

「だけどね、ハク。ハクにとってなにが一番大事なのか、自分でも分かってるよね」

 小さな女の子の姿のまま、ハクはその表情を暗くした。

「……分かってるよ。自分でも、無駄なことしてるって……」

「ハクは天上に戻って、やらなくちゃいけないことがあるんでしょう? 宝玉は見つかったよ。ハクはハクのすることをやらなきゃ」

 ハクは舞香の腕に抱かれたまま、俺の手にある宝玉をじっと見つめる。