「…これで信じてくれる？」


真っ直ぐ見つめる瞳に、紡木は今度こそ頷くしかなかった。


「ごめんなさい…私勘違いして、先生に酷い態度取ってました…。」


しゅんと首を垂れてそう言う紡木に西園寺はクスリと笑った。


「可愛いね。」


いつもの柔らかい笑顔とは違う、少し意地悪を含んだ笑みが月明かりに照らされて、紡木の胸は大きく飛び跳ねた。


赤くなった顔を隠すように紡木は俯いて「…可愛くないです。」とぼそりと呟くように言った。


「まあしょうがないよ。母さん、年齢の割に若く見えるし。息子の僕が言うのもなんだけど。」


そう言って笑い飛ばす西園寺をよそに、紡木は深くため息をついた。


「…私、先生に執着心が湧いてるのかも。」

「へ…？」


紡木の思わぬ言葉に、西園寺は驚きのあまりなんともまぬけな声が出漏れた。


「先生が私のことを何があっても好きでいてくれるって勝手に思ってるから、先生に他の女の人の影が見えたりすると、すごく悲しくて、寂しくて…

彼女でもなんでもない私が、こんな気持ち抱いていいわけがないのに。」