「そうだよね。でも僕馬鹿だからどれだけ考えても分からなくて。
紡木さんの口から聞きたいんだ、ちゃんと。」
そうはっきりとした口調で食い下がる西園寺に紡木は驚いて彼を見上げた。
その視線に気付いたのか眉を下げて懇願するような表情の西園寺が紡木を見下ろすように見つめてきたので、彼女は慌てて視線を前に戻した。
そしてひとつ、深く息を吐くと口を開いた。
「ヒントをあげます。先生が体調を崩してマンションに行った日。」
ぶっきらぼうな口調でそう言う紡木に、西園寺は「僕が体調を崩した日…。」と繰り返して考え込んだ。
「紡木さんに対してちょっと冷たかったとか?だってあれは、紡木さんに風邪をうつしたくなくて…。」
『家に上げるわけには行かないから、帰ってもらっていいかな。』
自身が紡木に対して言ったことを思い出した西園寺はそう釈明した。
しかし紡木は首を横に振って「違います。」と返した。