マンションの前に到着したタクシーから降りると、立ち話もなんだから、と西園寺は歩き出した。
紡木は再びその後ろをちょこちょことついていった。
「あのさ。」
気づけば前を歩いていたはずの西園寺が、歩くスピードを緩めて紡木の横へ並んだ時、彼は思い切って口を開いた。
「なんで僕のことを避けてるの?」
その西園寺の言葉で、彼のことを避けているということを思い出した紡木は言葉を詰まらせた。
「別に…避けてるとか…。」
そうしてようやく絞り出した言葉を、西園寺は「そんなわけないじゃん。」と一蹴した。
「僕、何か悪い事した?それなら言ってほしい。改善するように頑張るから。」
「そんなの…自分の胸に聞いてみたらいいんじゃないですか。」
私のことが好きって言っときながら部屋に女性を連れ込んで、なにが悪い事した?だ。
わかりきってるくせに、むかつく!
そう思って紡木は強い口調でそう返した。