タクシーは西園寺が近づくとドアがパタンと開いた。

それを見た西園寺は紡木に乗るように促した。


紡木が促されるまま車内へと乗り込むと西園寺は「運転手さんにお家の住所、言って。」と彼女に言った。


彼女が言われるがまま運転手に住所を伝えている間に、西園寺は財布からお札を抜いて彼女に手渡そうとした。


しかし、途中まで手を伸ばしたところで思いとどまってスッと手をひいた。

そのかわりに紡木の隣に乗り込んだ。


「えっ?」


思わぬ出来事に紡木が声を上げたが、西園寺はそれを無視して何食わぬ顔で「お願いします。」と運転手に向かって言った。