「せん、せ…?」


紡木も西園寺がいることは一切聞いていなかったみたいで目を丸くして彼を見つめた後、我に帰ったかのようにぷいと顔を逸らした。


「…紡木さん、帰ろう。」


西園寺はそう言うと自分の手荷物を取って立ち上がった。


「な、なんでですか。帰らないです。」


顔を逸らしたまま、そう拗ねたような声色で言う紡木に、西園寺ははぁ、とため息を吐いた。