紡木のクラスの前に到着すると、西園寺は夢中で教室内を覗いた。

そして窓側で蓮と談笑する紡木を見つけると、周りの目など気にすることなく大きく手を振った。


紡木さん!気づいて…!


しかしちらりと目があったのも束の間、わざとらしく逸らされてしまった。


僕が、何をしたって言うんだ…!


西園寺が大きく項垂れているといつの間にか蓮が近くに来ていた。


「おい、西園寺。」

「な、なに、霧島くん。」


いつになく強く睨んでくる蓮に、西園寺は一瞬怯みながらも笑顔で対応した。


「ツムツムが、どっか行けって。」

「はあ?」


何でこんなやつに言われなきゃいけないんだ、と西園寺は呆れた声を出した。


「ツムツムが嫌って言ってんだよ。わかんねえのか?…人が嫌がることをすんな。」

「…わかったよ。」


珍しく正論を言う蓮に、西園寺は負けておずおずと職員室へと戻って行った。