「つ、紡木さん…?」


唇を噛んで感情を抑えてエレベーターに乗った紡木を病み上がりの身体で追いかけようとしたところで、「ちょっと、圭統?」と部屋から出てきた人物に肩をつかまれた。


「誰か来てたの?ご挨拶くらいさせてよ。」


そう言って口を尖らせる彼女に、西園寺は深くため息をついた。


「…って、母さんがエントランスに通したんだろ。勝手に出ないでよ。」


西園寺は振り向きざまに母に鋭い視線を投げると、「だって、貴方が出ないからお母さんが代わりに出てあげたんじゃない。」と悪びれもせずそう返した。