「やっと、見つけた…。」
小一時間探し回って、最後の望みをかけて屋上の扉を開けると、ベンチの上で横たわっている蓮を見つけて葵は息絶え絶えに呟いた。
屋上は秋の優しい太陽の光に、心地よい温度の風が吹いていて寝るのにはぴったりの場所だった。
寝ている蓮にこっそり近づいて横にちょこんと腰を下ろした。彼の眉間には見たことがないほど深い皺が刻まれていて葵は少し驚いた。
暫くまともに見ていなかった彼の顔は以前よりも濃くクマが現れていて、肌もガサついている。
頬も少しこけたように感じて、そっと撫でた。
誰のためにこんなにボロボロになるほど頑張っているの。
私のため?それとも…。
葵は下唇を強く噛んだ。
いいんだ。そうなればいいって、思ってきたんだから。
私じゃない、蓮のお母さんにも認めてもらえる素敵な人に蓮が出会えて、蓮が会社を継げたのなら、それが私の幸せだって。
だからつむちゃんにも蓮にももうほっといてほしいって自分から言ったのに。
なのに、何で…
何でこんなに辛くて、寂しくて、涙が出てくるの。
何で今更後悔しているの…。