「おーい、つむちゃーん!」

気づけば片付けも簡単な帰りの会も終わっていて、考え事をしながら下駄箱へと向かっていると、葵が既に靴を履いて下駄箱の出口から手を振って紡木を呼んでいた。


紡木はその声にびくりと驚くと、少し間があいてから葵に手を振った。


「ねえねえ、何食べる?」

「うーん…何にしよっか…。」

「…つむちゃん?何かあった?」


心ここに在らずな紡木に葵が心配になってそう声を掛けると、紡木は驚いて少し目を見開いた後、眉を思いっきり下げて切なげな表情を浮かべた。


「な、なんでもないよ。」


全く説得力のないその言葉に、葵は紡木の手を掴んだ。


「話聞くよ?」

「ううん、大丈夫。」

「…私はつむちゃんにたくさん助けられたら、今度はつむちゃんが悩んでる時に力になりたいの。」


葵が真っ直ぐ紡木を見つめて言うと、頑なに拒んでいた彼女も首を縦に振った。


「とりあえず、ファミレスいこ!そこで話そ!」

そう言うと葵は紡木の手を引っ張って走り出した。