化学室を経由して準備室に入ると、西園寺は椅子に腰掛けた。
紡木も近くの椅子に座ると窓の外に花火がちょうど上がった。
「綺麗だね。」
西園寺も同じように窓の外を見上げてそう呟くと、紡木も静かに頷いた。
「夏祭りのこと、思い出すね。」
そう言って静かに笑う西園寺に、同じことを思ってたのがうれしくて紡木も頬を弛ませて頷いた。
「…先生は、なんで、由梨ちゃんを振ったんですか?」
紡木は少し間を置いた後、意を決してそう聞いた。
「紡木さんが好きだからに決まってるでしょ。」
当たり前のように欲しい言葉をくれる西園寺に、紡木は安心感とドキドキが混ざった気持ちで胸がいっぱいになった。
「紡木さんは、僕と吉田さんをくっつけようとしたの?
…僕は紡木さんが好きだって、知ってるのに?」
「えっと、それは、」
拗ねたように言う西園寺に、紡木は言葉を詰まらせた。
「やっぱそうだったんだ。
…僕、本当に紡木さんのことが好きなんだ。
だから、紡木さんのする事は全部受け入れるよ。
…それにしても結構傷ついたけどね。」
そう自嘲気味に笑う西園寺に、紡木は罪悪感で目に涙をためた。