気づけばバンド演奏は激しいロックから、バラードに変わっていた。
切ない恋を描いた歌詞に、紡木はなんとなく屋上の方を見上げた。
見えたところで、どうしようもないのに、気づいたら視線を送ってしまう。
「あ…。」
その時、が屋上の真下の教室─化学準備室の窓を開けて西園寺がグラウンドを見下ろしているのが紡木の視界に入って、思わず声を上げた。
微かに見える表情は、怒っているような、悲しんでいるような、切ない表情だった。
もしかして─
「つむちゃん…。」
急に名前を呼ばれた紡木はその声の方を向くと、そこには由梨が泣き顔で立っていた。
「ど、どうしたの?」
驚いて椅子から立ち上がって由梨に近づくと、由梨はガバッと紡木に抱きついた。