「あ、えっと…自分の部屋です」


『そこには何かありますか?外に何か目印になるようなものはありませんか?』


大也さんは、どこか焦ったように質問攻めをしてくる。


「部屋の中は…クローゼットと布団があって、今は左手を鎖で繋がれてます」


『鎖!?』


正直に答えたらまた叫ばれて、驚いた私はスマホを今までとは反対の耳に押し当てた。


『あ、申し訳ありません…。外には何がありますか?』


「外は何も見えなくて、…でも、朝10時に黒木温泉行きのバスのアナウンスが聞こえてきます」


それにしても、どうしてこんな事を聞いてくるのだろう。


私は、3つ目の飴を舐める事なく危険を回避して、それでもって下僕になる為にどうしたら良いのか聞いているだけなのに。


『………』


押し黙ってしまった電話の相手に、私は尋ねてみた。


「…あの、私はどうしたらいいですか?」


『…お客様は、タピオカはお好きですか?』


尋ねたはずが、意味の分からない質問で返されてしまった。


(タピ…?何それ)


首を傾げた私が、タピオカとは何ですか?、と聞きたくてまた口を開いた瞬間。


「タピオカミルクティーMサイズ、パールは2倍」


不可解な横文字のオンパレードが、口をついで出た。