「え?…紫苑ちゃん?」


ここで何故あの花の名前が出てきたか分からない私は、混乱しながらその言葉をオウム返しする。


『?…君、紫苑ちゃんだよね?』


「いえ、…私、0114番です」


『へ!?』


花の名前を連呼する彼に私の名前を教えると、彼は大声で奇声を発した。


(え!?何?)


驚き過ぎて、思わず耳元からスマホを外す。


『あ、申し訳ありません、人違いでした…。どのようなご要件でしょうか?』


もう一度スマホを耳に当てた時に聞こえてきたのは、低くて流れるような声。


「あの、…私、覚えてた電話番号にかけたんですけど。大叔母さんに、飴を3つ舐めさせられそうで困ってるんです。このままじゃ危ない気がして、それで……」


そこで我に返った私は、本当の要件を息せき切って話し始めた。


「0823番も飴3つは危ないみたいな言い方してて、飴を沢山舐めたサキって子は人が変わっちゃったみたいに大人しくなって…。私は私のまま下僕になりたいんですけど、でも今のままじゃ危険な感じがして、どうしたらいいですか?」


『大叔母さん…?下僕?…すみませんが、お客様は今どちらにいらっしゃいますか?』


一瞬怪訝そうな声を出した彼は、丁寧な言葉遣いで私に質問してきた。