その瞬間。


『これね、104 2525(天使 にこにこ)っていう語呂なの!……No.1…って言えば、出れるから!』


知らない男の人の声が、脳内再生された。


「え、」


余りに驚きすぎて、スマホを取り落としそうになる。


まるでお手玉のように右手から左手へ跳ねて移動するそれをしっかりと右手でつかみ直した私は、大きく息を吐いた。


「頭、痛くない。……電話番号は、104 2525。天使、にこにこ」


若干0823番が言っていた番号と違う気がするけれど、この際仕方がない。


何せ、私が辛うじて思い出せた数列はそれしかないのだから。



もう一度ドアの向こうの様子に変化がない事を確認した私は、ゆっくりと数字を押していった。


「104 2525…緑色のボタンを、押す」


言葉に出しながら、私は震える手で通話ボタンを押した。


途端に画面が切り替わる。


(わっ、)


身体がびくん、と震えたけれど、私は意を決してスマホを耳に押し当てた。




プルルルルル……プルルルルル……




何度か呼び出し音がなった後。



『お電話ありがとうございます、ホストクラブ“Angel”です』