思い出せない事に対するいらいらが既に頂点に達している中、私は3桁の数字を入力した。


「はぁ、もう無理だ…分かんない!…0114はイイヨちゃん、1140は良いよお、なら104は……」


本当は、外部に電話をして助けを求めるはずだったのに。


何の変哲もないその数列を見ながら、私は回らない頭で何となく語呂合わせを考え始めていた。


私がそんなくだらない事を考え始めたのは、紛れもなくあの語呂合わせ好きな大叔母さんのせいだ。



「104は……じゅう、いや……てん、し?」


てんし。


「天使?」




104の語呂合わせは、天使。


「104は、天使……」


あれ、どうしたんだろう。


(これ、知ってる………)


昨日の献立も0823番との会話も覚えていなくてパニック状態だった頭が、少しずつ落ち着いていく。


(何で、知ってるんだろう……)


この語呂合わせは、0823番に教えて貰ったことはない。


それなのに、私の脳みそは“知っている”と叫んでいる。


(何これ、)


また頭痛に襲われる事覚悟で、私は目を閉じた。


全神経を集中させ、


「104は、天使」


とだけ唱え続ける。


(誰に言われた?何で知ってるの?誰が教えてくれた?)


呼吸を止め、眉に皺を寄せ、唇を噛み締めて。


(思い出して、私!)