「待って、落ち着いて考えれば分かる…!確か、1がついてたはず、」


緊張と焦りで額から汗が滲んできて、私は毛布で汗を拭った。


熱を出したあの日から同じ毛布を使っているから、臭くて臭くて堪らない。


けれど今は、そんな臭いに顔をしかめる余裕すらなかった。


(…何なのよもう、全然思い出せない!)


考えれば考える程、思い出そうとすればする程、記憶という景色に靄がかかって何も浮かんでこないのだ。


(どうして?何で!?…何で、昨日食べたものまで分からなくなってるの!?)


たった数日前に0823番に教わったはずの電話番号も、昨日食べた献立すら思い出せない。


(…っ、何これ!これじゃあ電話かけれないじゃん!)



焦りに焦った私は、もうやけくそ混じりに自分の名前である“0114”を入力してみた。


「0823番が言ってた番号、こんな感じだった気がしなくもないけど…。…いや違うな、0の位置が違う」


もはや、自分の記憶に自信なんてない。


0823番はもう電話番号なんて教えてくれないだろうから、自分で答えを見つけるしかなかった。


「1140は?……何か違う…114?…いや、これはイイヨちゃん…」


ぶつぶつ独り言を呟きながら、私は入力と削除を繰り返して。


「……なら、104は?」