何故、一食に飴を3つ舐めると人格が変わることを私が知っているのか。
それは、飴をトイレに捨てる生活を始めた次の日、私はドアの外を通る“サキ”とその下僕の会話を偶然耳にしたからだった。
以前はあんなに、
「私の名前はサキ!思い出したの!」
と叫んでいたはずの彼女は、
「これでやっと1人前の下僕になれるなんて、本当に嬉しい。…あの飴を沢山舐めたおかげだね!私、あの飴だーいすき」
と、まるで別人かと疑いたくなる程の落ち着いた声で隣を歩いているだろう下僕に向かって話していて。
まるで、自分があんなに“サキ”と訴えていたのを忘れたかのようなその口振りと飴に関する台詞に、私は一層不安を強くさせたのだった。
(このままじゃ、私が私じゃなくなる…。頭が痛くなくなるのは嬉しいけど、あんな風にだけはなりたくない、)
『5月18日(水) 20:47』
紫苑の花が咲くスマホの画面を凝視しながら、悶々と考え続ける事早1時間。
(……電話、かけよう)
ドアの方を確認し、誰の気配もしない事を確認した私は、そっとスマホを手に取った。
0823番には、熱を出したあの日以前の事で何か思い出した事があれば電話をかけるように言われていたけれど、今はそんな呑気な事を言っている場合ではない。
それは、飴をトイレに捨てる生活を始めた次の日、私はドアの外を通る“サキ”とその下僕の会話を偶然耳にしたからだった。
以前はあんなに、
「私の名前はサキ!思い出したの!」
と叫んでいたはずの彼女は、
「これでやっと1人前の下僕になれるなんて、本当に嬉しい。…あの飴を沢山舐めたおかげだね!私、あの飴だーいすき」
と、まるで別人かと疑いたくなる程の落ち着いた声で隣を歩いているだろう下僕に向かって話していて。
まるで、自分があんなに“サキ”と訴えていたのを忘れたかのようなその口振りと飴に関する台詞に、私は一層不安を強くさせたのだった。
(このままじゃ、私が私じゃなくなる…。頭が痛くなくなるのは嬉しいけど、あんな風にだけはなりたくない、)
『5月18日(水) 20:47』
紫苑の花が咲くスマホの画面を凝視しながら、悶々と考え続ける事早1時間。
(……電話、かけよう)
ドアの方を確認し、誰の気配もしない事を確認した私は、そっとスマホを手に取った。
0823番には、熱を出したあの日以前の事で何か思い出した事があれば電話をかけるように言われていたけれど、今はそんな呑気な事を言っている場合ではない。