振り返ると、大げさにアクビをしながら剣道着を担いだタイスケがこちらに向って歩いてきていた。

「あら、お二人さん、相変わらず仲のよろしいことで。」

タイスケはこれまたわざとらしく私たちに敬礼をした。

「お前ら、何か食うモン持ってね?腹減って腹減って死にそうなんだよ。」

そう言うと、ぐだぐだっと私の前に倒れた。

「ナツミ、お前だったら何か持ってんだろ。いつも部活の帰りほっぺた膨らましてもぐもぐしてるじゃんか。」

「し、失礼ね。持ってたとしてもあんたにあげるかどうかは私が決めることよ。」

「じゃ、迷わずくれ。」

タイスケはニヤッと笑いながら右手を出した。

こいつ、よりによって大事な話してるときに限って現れやがって。

舌打ちしながら、カバンの中からキットカットを一つ出してあげた。

「おおっ。センキュー。どこまでもお供しますぜ姉御!」

タイスケはもらったキットカットを頭上に掲げてぴりぴりと封を開けた。

私はマヨの方を向いて苦笑した。

マヨも少し笑った。

「また、今度にしよっか。」

「そうだね。」

タイスケは口をもぐもぐさせながら、

「へ?何々?なんか大事な話でもされておらっしゃいましたか?」

なんてわざと間違った敬語を使いながら言った。