もー。

私は今あんたとしゃべるほど余裕ないのよ。

もう少しで松川くんがこの前を通るかもしれないんだから！

その場をさっさと立ち去ろうと、ジャージを元あった場所にかけた。

「もう帰るの？」

少し残念そうなタイスケの声。

「だって、私には他にやらないといけないことがあるの！」

「何やんのさ。誰か尾行でもしてんのか？」

ふざけた顔でタイスケが言った。

まんざら間違ってないことを言うタイスケに強く否定できない自分がいた。

「ま、あんたにはどうでもいいことよ。」

急にタイスケは私の腕を掴んで引き寄せた。

そして耳元で小さな声で聞いてきた。

「なぁ、お前知ってるんだろ？」

「な、何をよ。」

「マヨの奴、最近彼氏出来たみたいだぜ。」

え？！

「俺、こないだ丁度このお店から見ちゃったんだ。」

「・・・」

なんだか胸がドキドキしてきた。

「松川って知ってるだろ？お前のクラスの。」

声が出ない。

「そいつと、ほら、あそこの英会話学校から仲良さそうに出てきたんだよ。」