「え?ああ、これね。こないだ買い物出た時に、お店の人に勧められて買っちゃった。保湿効果もあるんだって。」

「へー。私ばっかちゃかすけど、マヨの方こそなんだか急に色気づいちゃったんじゃないのー。あやしいなぁ。」

「違うって。お店の人がすごくいい人でさー。色々話し込んじゃって、なんだか買わないと悪い状況になっちゃったのよ。」

ふ~ん。

グロスなんて。全くマヨらしくないのに。

中学生の頃から、

「私たちだけは、あんなチャラチャラした女の子どもにはならないで、さばさば男っぽく行こうねー!」

って大口あけて笑ってたのに。

でも、

マヨのグロス、とってもきれい。

口元がつやつや光ってて、なんだかそれだけで、マヨがきれいにみえる。

いつものマヨじゃないみたい。

でも、とても似合っていた。

「私も。」

「ん?」

「私も買おうかなぁ。」

マヨは、そうつぶやいた私を大きく見開いた目で見た。

そして、ぶぶぶーって吹き出して笑った。

「やめときなって。ナツミにはグロスなんて似合わないよ。せいぜい安物の色つきリップクリームで十分。」

「なによー!自分だってまだまだお子ちゃまのくせに粋がってつけてるじゃない!」

そんないつものバカ話を大げさに笑い合いながら、スタバの扉を開けた。