「おう。待った?」

背中から聞き覚えのある声。

振り返るとタイスケが右手を挙げてこちらに歩いてくる。

「別に。今来たばっかり。」

「お前、珍しくスカートなんかはいてんの?」

タイスケはカラカラと笑った。

でも、ちょっぴり頬が赤くなっていた。

「たまにはね。私だって一応女の子ですから。」

「まぁね。一応ね。」

「もう!」

私は、タイスケの腕を思いっきりひっぱたいてやった。

くだらない話をしながら、映画館の前につく。

「何観る?」
 
タイスケは映画の時刻表を眺めながら聞いてきた。

「笑える映画がいいな。」

私はぼそっと答えた。

「あ、ああ。そうだな。お前ふられたばっかだもんな。」

タイスケはチロッと私を見た。

まるで私の様子をうかがうように。

「何、気ぃ遣いながら言ってんのよ。」

「いや、ま、あれだよ。」

明らかに、動揺しているタイスケ。

なんか笑える。

「その通り、ふられたんだから思いっきり明るくて笑える映画が観たいのよ!」

私は半分笑って、タイスケをこずいた。