マヨは少しだけ安堵したような表情になって、そしてまた話だした。

「コンサート断った翌日、松川くんから電話がかかってきたんだ。『お前、好きな奴いるのか?』って。突然のことに私も訳わかんなくて。ただ、いるかいないかって聞かれたら、『いるよ。』って答えるしかなかったんだ。だけど、本当に気持ちは絶対知られたくなかったから、『松川くんの知らない人だよ。』って付け足した。」

マヨは冷たくなったココアを一口飲んだ。

私もゆっくりとココアを口に含む。

喉の奥に冷たくなった甘いチョコの香りが充満した。

「それからは、松川くんに時々誘われて、英会話学校の後、お茶したり少し立ち話したりっていう日が続いていった。コンサートが迫ってきたある日、松川くんがナツミを誘ったって私に言ってきたんだ。私は正直、よかったって思えなかった。今まで感じたことがないような、なんていうか苦しくて、辛くて、ナツミのことは大好きなのに、それが私の足に重くぶら下がった鎖みたいな感じがしてきて。そんな風に考えること自体が嫌で嫌で。その時、もう松川くんと親しくするのは、やめようって決心したんだ。」

マヨ、そんなにも一人で悩んでたの?

私一人で舞い上がったり、落ち込んだりしていた日々の間に。

「松川くんは、それから急に避けるようになった私に毎日電話をかけてくるようになった。ずっと電話でなかったんだけど、このままずっと出ないのもよくないかと思って、最後に一度だけ出ようって思ったんだ。出た時、言われた。『俺、お前のことが好きだ。』って。」

マヨはちっとも嬉しい顔をしなかった。

その表情は悲しみに沈んでいる。

さっきまでの私の鼓動はいつのまにかとても冷静になっていた。

「ナツミには正直に言うね。私もいつの間にか松川くんに惹かれてた。きっとナツミと同じくらいに好きな気持ちになってしまってた。本当にごめんなさい。」

ナツミには正直に言うねって。

松川くんには何て返事したの?

「マヨ、松川くんに告白されて、何て応えたの?」

マヨはフッと顔を上げた。