「ある英会話学校の帰り、松川くんに『一緒にそこまで帰らない?』って言われて。誰かにそんなところ見られるのも嫌だったから、思わずだまりこくったんだ。そしたら、松川くんが急に私の右手を掴んで、『ちょっと見せたいものがあるから』って、手をつないだまま学校の裏の公園まで私をひっぱっていったの。」

その光景は、まさにタイスケが見たその光景?

私はそのままココアのわずかな波に視線を落とした。

そのわずかなココアの揺れだけが、これが現実だってことを伝えているようだった。

「その時見せられたのが、あのコンサートのチケットだったんだ。」

胸の奥がずどーんと痛い。

呼吸するのも重たいくらいに。

もう、これ以上聞きたくない。

結果はわかってるのに、その先をしっかり聞きたいと思う自分もいる。

葛藤。

でも、私の口はカラカラに渇いて、言葉を発せられる状態ではなかった。

「松川くんに『一緒に行かないか?』って言われた。」

・・・。

やっぱり。

なんとなく。

そんな気はしていた。

そっか。

そうなんだ。