私は目の前のココアをそっと両手で包んだ。

あったかい。

あったかくて甘くて、見てるだけで癒される。

横に座るマヨを見ると、マヨも同じようにココアをじっと見つめていた。

「昨日、」

私から切り出した。

「結局、タイスケとコンサート行ったよ。」

ちらっとマヨを見ると、うつむいたままうなずいていた。

まるで既にそのことを知ってるかのように・・・。

やっばり。

「松川くんさ、直前に『行けなくなった』なんて電話してくるんだよ。ちょっとひどいよねぇ。」

言葉にすると、改めて自分自身が情けなくなってくる。

鼻の奥がツンとしてきた。

だめだめ。

まだ、泣いちゃだめなんだ。

「ナツミ。」

マヨはようやく顔をあげた。

「うん?」

「ずっと、言いたくて言えなくて、悩んでたことがあるんだ。」

マヨは私の目をじっと見つめた。

吸い込まれそうな黒い瞳から、思わず目をそらした。