そうだ。

お母さんに電話しよう。

今の状況、聞いてもらったら少しは気持ちが楽になるかもしれない。

大通りを逸れた路地に入る。

ここなら、あまり人気もないし、電話してても気にならないよね。

プルルル・・・

早く出て。お母さん。

『はいはい。ナツミ?どうしたの?』

お母さんは少し驚いた声で言った。

「実はさ。松川くん、今日来れなくなったって連絡があったんだ。」

『あら・・・そう。それは急だわね。どうしてまた?』

「急にはずせない用事が入っちゃったんだって。」

『はずせない用事?当日になって?』

「うん。しょうがないよ。」

『それはおかしいでしょう。』

お母さんの声は明らかに松川くんに対して怒っていた。

そんなお母さんの声を聞いてるうちに、今まで堪えていたものが涙になってあふれてきた。

「やっぱりおかしいよね?ヒック、普通、当日に、しかも直前になって用事なんてさ、ヒック。」

『ナツミ、泣いてるの?もう今すぐ帰ってらっしゃい。それか、今からお母さんがそっちへ向おうか?』

「うん、いいの。偶然、タイスケに会ってさ。タイスケもコンサートのチケット持ってて、一緒に行くことにしたから。」

『え?そうなの?』

お母さんはいくらか安心したような声で言った。