タイスケは腕時計を見た。

「まだ時間あるな。どうする?」

「別に。適当に時間つぶすしかないでしょ。」

タイスケは頭をポリポリ掻きながら、

「俺さ、ちょっと買いたい物があるから、今から別行動でコンサート会場で落ち合ってもいいかな。」

は?

あんたまで私から逃げる気?

今はなんとなく一人になりたくなかったのに。

でも、そこは素直になれない私。

「いいよ。じゃ、17時半に会場の前でね。」

私はタイスケの顔も見ずに、そのまま前を向いて歩いていった。

振り返りはしなかったけど、タイスケは元来た道を戻っていったようだった。

何よ。

レディと一緒にいながら、自分の買い物だなんて。

私ってよっぽど魅力がないんだわ。

松川くんからの電話の後から、急激に自分に自信がなくなっていってる。

やっぱり願掛けしたグロス。

ぬってくるんだった。