「あっ、あの……!椿くん、いつも応援してます!」



よそ行きスマイルを顔に貼り付けたままのカヤに、美湖ちゃんは応援を伝えている。



カヤ、愛されてるんだなぁ。



なんだか私まで嬉しくなってきてしまう。



「ありがと、その言葉が励みになるよ。……申し訳ないけど帰るね。ここにいたこと内緒だよ」



カヤは美湖ちゃんにひらひらと手を振って、でも私の手を離さずにカラオケ店から出て行く。



「カヤ?なんでわかったの」



無言で歩くカヤに問いかける。



怒らせちゃったな……。



「ばーか、お前が合コン行ってくるとか言い出したからだろーがよ」



ツン、とそっぽを向くカヤ。



そこで私ははたと気づく。



カヤ、怒ってるっていうより……拗ねてる……?



不満そうに口を尖らせて、そっぽを向いているカヤの手を握り返して見る。



まるで犬みたい。



握り返すと耳が少し赤くなって、見えないしっぽをブンブンと振っているよう。