「お疲れ様でーす」

「お疲れ様です」
 
 夜十九時半すぎ、一日の仕事を終えた私たちは、お店のドアに鍵をかけてそれぞれの家へと帰宅し始める。
 明日は店休日で仕事が休みだ。

 カバンからスマホを取り出し、裕太さんに【今から帰りますね】とメールを送る。

【お疲れ様。夕飯作って待ってるよ】

 裕太さんのメールはいつも優しい文面で、なんか心がほっとする。

【ありがとう。急いで帰るね】

【急がなくていいから、ゆっくり帰って来なよ】

 裕太さんはとにかく優しい。優しすぎて時々不安になることもあるけど。

【ありがとう】

 私は裕太さんが待つ家へと急ぐ。



「ただいま」
 
「おかえり、愛南」

 裕太さんは帰ってきた私をそっと抱きしめる。

「お仕事、お疲れ様」

「ありがとう。 わ、いいニオイする」

 リビングに向かうと、カレーのいいニオイがする。

「今日はカレーなの?」

「うん。野菜が特売で安くなってたから、カレーにしたんだ」

 リビングいっぱいに漂う美味しそうな香りに、思わず「美味しそう」と声が漏れる。
 
「あ、私も手伝うよ?」

 と言ったけど、裕太さんは「いいよ、愛南は座ってて」と言ってくれる。