「ふふふ。少し簡単だったかしら?でもこんなに早く帰ってきてよかったの?もう少しゆっくりしてくるかと思ったのに。」
「とにかく早く帰って師匠に判断をもらいたくて…本当に良かったです。」
「あらあら。じゃあ、結果を知らせる為にも後で改めて休暇を出すわね。」
ご家族と随分顔を合わせていなかったでしょう、続くラリマの言葉にセドニーは苦笑いするしかなかった。やはりこれはラリマの気遣いだったのだと思い知らされる。確かに久しぶりに家族の顔を見て、随分と心配されていたのだとよく分かったのだ。
「師匠、色々とありがとうございます。」
「ふふ。可愛い弟子の為よ。」
「でも…盗撮はやめてください。」
緊張がほぐれて調子が出たのか、セドニーは実家で聞いたラリマからの映像報告の話を思い出して追求した。聞いていない、自分の日常を記録されているなんて全く知らなかったのだ。しかも見せたくもない、知られたくもない事まで筒抜けだったなんて。
「次からやったらしばらく口を利きませんからね!」
「ええええ!それは嫌よ!!」
これは親代わりとして当然の行いをしたまでだと自分を正当化する言い訳を次々に発してくる。どうにかして許してもらおうと色んな角度で攻めてくるがセドニーもそんなラリマの交わし方をこれまでの経験で学んでいた。
口を閉ざして言い訳から謝罪の言葉に変わるまでその時を待つのみ。まだまだ自分の正当化を諦めきれない師匠の言葉を聞き流すためセドニーは目を閉じて時間が過ぎるのを待った。
分かっている。どれだけ言ってもラリマはまた同じことをするだろう。師としてだけではなく、それこそ本当に親代わりとなって今まで支えてくれていたのはラリマだったのだから。
「セドニー、悪かったわ。貴女ももう一人前だものね…これからは十分に気を付ける。」
「今後は私の意思を確認してください。」
「毎回?」
「毎回です。」
「…頑張るわ。」
「そうしてください。」
ハッキリと約束はしてくれなかったが今回はそれだけでも十分だとセドニーは苦笑いをした。ラリマはその美しい顔を少し崩して寂しそうに拗ねている。どんな感情を表しても綺麗な顔は綺麗なままなんだなと羨ましさ半分に感心した。
ラリマが美しいのは容姿だけではない、その内側の心も同じように美しかった。セドニーは確かにこの人に支えられてここまで来た。魔女の事も生活の事も全て親の手から引き継いだラリマがセドニーを導いてくれていたのだ。
ラリマは初めからセドニーがしっかりと独り立ちできるように成長できる場所を用意してくれていた。同僚や先輩に囲まれながら生活をし、必死に魔女の腕を磨いてきたその傍でラリマはいつも見守ってくれていたのだ。
挫けそうな時も強がっている時も、行き詰っている時も穏やかな時も、前向きに取り組もうと意気込んでいる時もラリマは師として支えてくれていた。何があっても必ず自分が守ってやると、絶対的な安心を与えてくれていた。
「師匠…これまでありがとうございました。」
「ええ。…見習いを終えたからといって私たちの関係が終わる訳じゃないのよ?」
「はい。」
セドニーが胸を熱くしながら感謝を述べるとラリマは柔らかく微笑んで頷く。そして今までとこれからを意識する言葉を口にしたことがセドニーは嬉しかった。
「セドニー、水晶玉をこちらへ。」
「はい。」
カバンの中に入れていた借り物の水晶玉をラリマに言われたように机の上にそっと置く。これは練習用だと聞かされていたから返さなければいけないのだとセドニーも分かっていた。
今までありがとう、そう胸の内で伝えて最後にひと撫で水晶に触れる。セドニーに応えるように水晶玉は淡く光を放った。
「長い間よく頑張ったわね。これをもって見習い課程を修了とします。ここから独り立ちすることを認めましょう。」
「師匠…。」
「これからどうするのか、彼と相談するといいわ。」
そう言ってラリマはセドニーの右耳にある飾りに指先で風を送る。ふわりと風の精霊が姿を現して楽しそうにほほ笑んで消えた。まるでアズロとの関係を揶揄われているようで、恥ずかしくなってセドニーは慌てて右耳を隠した。そんなセドニーにほほ笑むとラリマはほんの少し寂し気な表情を見せて視線を落とす。
「楽しかったわね…貴女と過ごした日々は私の宝物よ。」
「私もです、師匠。」
「何かあればすぐ私に相談しに来てね。どこにいても私が貴女の師匠であることには変わりないんだから。…いい?魔女として必要な事は遠慮せずに私を頼りなさい、セドニー。」
「はい!」
「とにかく早く帰って師匠に判断をもらいたくて…本当に良かったです。」
「あらあら。じゃあ、結果を知らせる為にも後で改めて休暇を出すわね。」
ご家族と随分顔を合わせていなかったでしょう、続くラリマの言葉にセドニーは苦笑いするしかなかった。やはりこれはラリマの気遣いだったのだと思い知らされる。確かに久しぶりに家族の顔を見て、随分と心配されていたのだとよく分かったのだ。
「師匠、色々とありがとうございます。」
「ふふ。可愛い弟子の為よ。」
「でも…盗撮はやめてください。」
緊張がほぐれて調子が出たのか、セドニーは実家で聞いたラリマからの映像報告の話を思い出して追求した。聞いていない、自分の日常を記録されているなんて全く知らなかったのだ。しかも見せたくもない、知られたくもない事まで筒抜けだったなんて。
「次からやったらしばらく口を利きませんからね!」
「ええええ!それは嫌よ!!」
これは親代わりとして当然の行いをしたまでだと自分を正当化する言い訳を次々に発してくる。どうにかして許してもらおうと色んな角度で攻めてくるがセドニーもそんなラリマの交わし方をこれまでの経験で学んでいた。
口を閉ざして言い訳から謝罪の言葉に変わるまでその時を待つのみ。まだまだ自分の正当化を諦めきれない師匠の言葉を聞き流すためセドニーは目を閉じて時間が過ぎるのを待った。
分かっている。どれだけ言ってもラリマはまた同じことをするだろう。師としてだけではなく、それこそ本当に親代わりとなって今まで支えてくれていたのはラリマだったのだから。
「セドニー、悪かったわ。貴女ももう一人前だものね…これからは十分に気を付ける。」
「今後は私の意思を確認してください。」
「毎回?」
「毎回です。」
「…頑張るわ。」
「そうしてください。」
ハッキリと約束はしてくれなかったが今回はそれだけでも十分だとセドニーは苦笑いをした。ラリマはその美しい顔を少し崩して寂しそうに拗ねている。どんな感情を表しても綺麗な顔は綺麗なままなんだなと羨ましさ半分に感心した。
ラリマが美しいのは容姿だけではない、その内側の心も同じように美しかった。セドニーは確かにこの人に支えられてここまで来た。魔女の事も生活の事も全て親の手から引き継いだラリマがセドニーを導いてくれていたのだ。
ラリマは初めからセドニーがしっかりと独り立ちできるように成長できる場所を用意してくれていた。同僚や先輩に囲まれながら生活をし、必死に魔女の腕を磨いてきたその傍でラリマはいつも見守ってくれていたのだ。
挫けそうな時も強がっている時も、行き詰っている時も穏やかな時も、前向きに取り組もうと意気込んでいる時もラリマは師として支えてくれていた。何があっても必ず自分が守ってやると、絶対的な安心を与えてくれていた。
「師匠…これまでありがとうございました。」
「ええ。…見習いを終えたからといって私たちの関係が終わる訳じゃないのよ?」
「はい。」
セドニーが胸を熱くしながら感謝を述べるとラリマは柔らかく微笑んで頷く。そして今までとこれからを意識する言葉を口にしたことがセドニーは嬉しかった。
「セドニー、水晶玉をこちらへ。」
「はい。」
カバンの中に入れていた借り物の水晶玉をラリマに言われたように机の上にそっと置く。これは練習用だと聞かされていたから返さなければいけないのだとセドニーも分かっていた。
今までありがとう、そう胸の内で伝えて最後にひと撫で水晶に触れる。セドニーに応えるように水晶玉は淡く光を放った。
「長い間よく頑張ったわね。これをもって見習い課程を修了とします。ここから独り立ちすることを認めましょう。」
「師匠…。」
「これからどうするのか、彼と相談するといいわ。」
そう言ってラリマはセドニーの右耳にある飾りに指先で風を送る。ふわりと風の精霊が姿を現して楽しそうにほほ笑んで消えた。まるでアズロとの関係を揶揄われているようで、恥ずかしくなってセドニーは慌てて右耳を隠した。そんなセドニーにほほ笑むとラリマはほんの少し寂し気な表情を見せて視線を落とす。
「楽しかったわね…貴女と過ごした日々は私の宝物よ。」
「私もです、師匠。」
「何かあればすぐ私に相談しに来てね。どこにいても私が貴女の師匠であることには変わりないんだから。…いい?魔女として必要な事は遠慮せずに私を頼りなさい、セドニー。」
「はい!」