「あ…。」
あの耳飾りだと気付いてセドニーは反射的に声を漏らした。
落ちてしまった耳飾りから離れていく足が見える、これはたぶん男性だと感じた。
離れていくにつれて靴や服装が明らかになっていく。白色の衣装、いや裾の長い外套か腰巻のような紫色の生地も見えてきた。
「あと少し…。」
腰に巻く帯が映る、背中が見える、褐色の腕が見えた。腕にはいくつかの装飾品が重ねられているのが分かる、この国には珍しいものばかりだ。
髪は風に揺れる程度の長さ、漆黒の髪から落ちてしまった耳飾りと同じものが見え隠れした。
「この人だ。」
間違いない、そう確信したセドニーはなんとか視界を彼の前に動かしたくて操作しようと試みた。顔さえ分かれば探しやすくなる。
おそらく持ち主は異国からの旅人だ、この国を去る前に返してあげたかった。
しかし思うように視界が動かない。
前には進んで近付いてはくれるのに角度がなかなか変わらないのだ。
「待って、あと少しなのに…っ。」
これはあくまで過去の出来事、セドニーの声なんて届くはずもないと分かっていても足を止めてほしくて声をかけてしまう。セドニーの頭の中では、彼女は必死に駆け寄って何とか引き留めようと手を伸ばしていた。
あと少しで届きそう。指先が触れそうな、その時彼は振り向いた。
「えっ!?」
その印象的な金色の目と、セドニーの緑色の目はお互いの姿を確かに映した。そう認識した瞬間、バチンっと音がしてセドニーは水晶玉の加護で弾かれてしまったのだ。
一瞬にして目の前の景色が自分の部屋へと変わった。占いは終わった。
「…手が…。」
弾かれた時に感じた衝撃で手が少し痺れている。静電気よりも強い衝撃は刺すような痛みでセドニーを現実へと引き戻した。
自分の息が荒くなっているのが分かる。
これが危険を犯さないための加護の働きなのか、そう静かに理解しながら治まらない動悸に肩で息をして平常心を取り戻そうとした。
しかしそれは難しそうだ。時が経てば経つほど戸惑いが濃くなっていくのが分かる。
「…いま…私…。」
耳飾りの持ち主と視線を交わした気がする。
そう理解して喉を鳴らした。こんなことはあり得るのだろうか。
確かに目が合った、だってセドニーは強烈に覚えている。振り返った瞬間からセドニーを捉えて離さない、あの印象的な金色の双眼を。
思い出すだけで全身が震えて自分自身を抱きしめるように身を縮めた。
こんなことがあり得るのだろうか。
何度目かの問いかけにも誰も答えてはくれない。
戸惑い混乱するセドニーに追い打ちをかけるように窓ガラスが大きく音を立てた。
「きゃあ!」
思わず悲鳴を上げてさらに心拍数を上げてしまう。
冗談はやめてくれと突風に嘆きながら窓の方に目をやると信じられない光景がそこにあった。
「あんたか、俺の事を覗いてたのは。」
さっき水晶の中で見た人物が窓枠のところに腰を掛けていたのだ。
風に揺れる漆黒の髪、そして印象深い金色の瞳が真っすぐにセドニーを射抜いていた。
本物だ。
驚きのあまり呼吸さえも停止しているセドニーの姿を彼は遠慮なしに眺めては納得したように声を漏らす。威嚇するような鋭い目つきから一変、口角を上げて意地悪く笑みを作った。
「よう。はじめまして、魔女。」
「…っごめんなさい!!!!」
片眉を上げて窺う男にセドニーは反射的に謝罪を口にしていた。
あの耳飾りだと気付いてセドニーは反射的に声を漏らした。
落ちてしまった耳飾りから離れていく足が見える、これはたぶん男性だと感じた。
離れていくにつれて靴や服装が明らかになっていく。白色の衣装、いや裾の長い外套か腰巻のような紫色の生地も見えてきた。
「あと少し…。」
腰に巻く帯が映る、背中が見える、褐色の腕が見えた。腕にはいくつかの装飾品が重ねられているのが分かる、この国には珍しいものばかりだ。
髪は風に揺れる程度の長さ、漆黒の髪から落ちてしまった耳飾りと同じものが見え隠れした。
「この人だ。」
間違いない、そう確信したセドニーはなんとか視界を彼の前に動かしたくて操作しようと試みた。顔さえ分かれば探しやすくなる。
おそらく持ち主は異国からの旅人だ、この国を去る前に返してあげたかった。
しかし思うように視界が動かない。
前には進んで近付いてはくれるのに角度がなかなか変わらないのだ。
「待って、あと少しなのに…っ。」
これはあくまで過去の出来事、セドニーの声なんて届くはずもないと分かっていても足を止めてほしくて声をかけてしまう。セドニーの頭の中では、彼女は必死に駆け寄って何とか引き留めようと手を伸ばしていた。
あと少しで届きそう。指先が触れそうな、その時彼は振り向いた。
「えっ!?」
その印象的な金色の目と、セドニーの緑色の目はお互いの姿を確かに映した。そう認識した瞬間、バチンっと音がしてセドニーは水晶玉の加護で弾かれてしまったのだ。
一瞬にして目の前の景色が自分の部屋へと変わった。占いは終わった。
「…手が…。」
弾かれた時に感じた衝撃で手が少し痺れている。静電気よりも強い衝撃は刺すような痛みでセドニーを現実へと引き戻した。
自分の息が荒くなっているのが分かる。
これが危険を犯さないための加護の働きなのか、そう静かに理解しながら治まらない動悸に肩で息をして平常心を取り戻そうとした。
しかしそれは難しそうだ。時が経てば経つほど戸惑いが濃くなっていくのが分かる。
「…いま…私…。」
耳飾りの持ち主と視線を交わした気がする。
そう理解して喉を鳴らした。こんなことはあり得るのだろうか。
確かに目が合った、だってセドニーは強烈に覚えている。振り返った瞬間からセドニーを捉えて離さない、あの印象的な金色の双眼を。
思い出すだけで全身が震えて自分自身を抱きしめるように身を縮めた。
こんなことがあり得るのだろうか。
何度目かの問いかけにも誰も答えてはくれない。
戸惑い混乱するセドニーに追い打ちをかけるように窓ガラスが大きく音を立てた。
「きゃあ!」
思わず悲鳴を上げてさらに心拍数を上げてしまう。
冗談はやめてくれと突風に嘆きながら窓の方に目をやると信じられない光景がそこにあった。
「あんたか、俺の事を覗いてたのは。」
さっき水晶の中で見た人物が窓枠のところに腰を掛けていたのだ。
風に揺れる漆黒の髪、そして印象深い金色の瞳が真っすぐにセドニーを射抜いていた。
本物だ。
驚きのあまり呼吸さえも停止しているセドニーの姿を彼は遠慮なしに眺めては納得したように声を漏らす。威嚇するような鋭い目つきから一変、口角を上げて意地悪く笑みを作った。
「よう。はじめまして、魔女。」
「…っごめんなさい!!!!」
片眉を上げて窺う男にセドニーは反射的に謝罪を口にしていた。